出会い
Webサイト制作を仕事とし、いまこうして書籍の執筆にも関わっているわたしですが、2005年まではWebとまったく関係のない業種で働いていて、そのときまではテーブルでレイアウトされたHTMLを触ったことがある、という程度の経験しかありませんでした。あるとき、なんとか自分のサイトをつくりたいという衝動にかられ、Webで検索し、「Movable Type」というブログツール(シックス・アパート社の製品)をつかうとWebサイトを簡単に構築できるということを知りました。Movable Typeにはまだ英語版しかなく、日本語化パッチをあてていた時代だったと思います。
Movable Typeとの出会いによってわたしの人生が大きく変わりました。テーブルレイアウトでWebページをつくった経験が少しだけあったからこそ、Movable Typeにはじめて触れたときは何もかもが「目からウロコ」だったのです。Webページの構造はXHTMLで書いて、見た目の部分をCSSが担当する。それまでの時代は、見た目を変更するのにいちいちテーブルのセルを数えてイライラして作業していたのに、なんとCSSを変更するだけで簡単にすべてのページのデザインが変更できてしまうということがあまりにも驚きでした。
苦難
その後、洋服を着せ替えるようにCSSデザインを楽しむには、XHTMLが美しくなくてはならないことを知り、ひとまずCSSの楽しみをあとまわしにし、徹底的にXHTMLの勉強に没頭しました。そのころW3Cの仕様書にも興味をもち、「ああなんてXHTMLってすばらしいんだろう」と、自分のサイトをつくり、情報発信することが動機だったはずなのに、 いつのまにかXHTMLとCSSの仕組みに惚れ込んでしまいました。
かなりストイックに、「美しいXHTMLを書く ためにはどんな工夫が必要か?」と思いながら、Movable Typeのテンプレートを自作しては壊し、自作しては壊しを繰り返して、気がついたら身についていました。そこで身につけた力を活かしてWebサービス 「コトノハ」(http://kotonoha.cc/)のXHTML+CSSへの書き換えを担当したのがきっかけとなり、名古屋から上京して東京でWebデザイナーの道を歩むことになりました。
実はCSSよりも、管理しやすくさまざまなデザイン変更に耐えられるXHTMLを常に追求したいと思っていたため、XHTMLの書き方、IDやクラスの名前のつけ方に苦心してきたような気がします。そのときに考えられるベストの名前をつけるのにこだわっていました。いまでも、プログラマーと協同で作業する際に「どのような名前をつけるべきか」を熱く語り合うことがよくあります。
思い返すと苦難ではなくて楽しいことばかりだった気がします。さらに、むずかしいと思われがちなCSSデザインのブラウザ調整は、むしろわたしにとって絶好の楽しみでした。ブラウザごとの挙動について知識が深まるので、ありがたいくらいでした。
克服
もともとXHTML+CSSという手段そのものに惚れ込んでこの世界に入ったため、その後のわたしの課題は、プロとしてWeb制作を行う際に、「お客さまやエンドユーザーのゴールや目的地へ、スムーズに導いてあげることができるか?」ということでした。
XHTML+CSSを「より正しく」「より効率的に」書くことは、Web制作者としてとても大切なことですし、知識もそれなりに必要です。わたしがこの世界に入りたてのころは、それはもう頭でっかちで、実践がともなっていませんでした。理想を語るだけではお客さまをよろこばせることはできませんし、よいWebサイトを提供することもできません。このことを、多くのWeb制作に関わりながら学びました。
Webサイトを見た人に「いいな!楽しいな!」と思ってもらえたり、クライアント企業に「効率的に運営できるようになった!」と感じてもらえるような価値を提供できてこそプロなんだということを、いまも、そしてこれからも忘れてはならないと思っています。


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