CSS Nite LP48「ライティング特集」フォローアップ(2)小田順子さん(ことのは本舗)

2016年10月22日(土)TKPガーデンシティPREMIUM神保町で開催したCSS Nite LP48「ライティング特集」のフォローアップとして、小田順子さん(ことのは本舗)の『その文章、キケンです!』セッションのスライドなどを公開します。

メッセージ

セッション2「その文章、キケンです!」を担当した小田順子です。

私は「文章のモノサシ」というお話をしました。対象は、「事実を正確に伝え、書き手が意図した行動を読み手に起こしてもらうための文章」です。しかし、鷹野さんの質問への回答でもお話したように、言葉はコミュニケーションツールです。不特定多数の相手に伝えるときと、特定の相手に伝えるときとでは、表現の使い分けが必要ですよね。

敬語については、さわりの部分だけをご紹介しました。補足説明として、敬語の解説動画「バカにされない敬語の使い方」をご覧ください。また、『その文章、キケンです!』(http://goo.gl/0Vnidj)をはじめ、私の書いた本にはすべて、敬語の解説がありますので、あわせてご覧いただければ幸いです。

以下、補足説明とご質問・ご意見への回答です。

漢字についての補足 常用外漢字と常用外音訓

たとえば「適宜」など、「宜」を「ギ」と音読みする使い方は常用漢字として認められています。しかし、「宜しく」を「よろしく」と訓読みする使い方は常用外です。つまり、漢字で書かず、ひらがなで書くほうがよいわけです。
このように、「ある読み方のときは使ってよいけれど、その読み方で使うのはNG」という「常用外音訓」というものもあります。これについては、ネット上にあるチェッカーは判断できないようです。
Wordなどの文章作成ソフトでは、ほとんどがチェック可能です。文章作成ソフトは、益子さんのセッションで紹介されていたサジェスト機能のような、校正機能もあります。文章作成には欠かせない便利な機能が満載。ぜひ、活用してください。そんなの、知らなかった! という方は、『その文章、キケンです!』(http://goo.gl/0Vnidj)の第4章「文章の組み立て方と校正方法」を読んでみてくださいね。

参考サイト

常用漢字表(平成22年内閣告示第2号) (文化庁のサイト)
http://kokugo.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kijun/naikaku/kanji/

質問・意見への回答

士業や役所のサイトを作っているが、文章が難解で、硬い。
それをどう伝えたらよいか困っている。

士業の方も、お客様のためにサイトを作っていると思います。お客様に伝わることは大切ですよね。役所も当然、伝わるように努力することが責務です。
士業や役所のサイトを作っている方は、ぜひ、私の書いた以下の本を「これ、役に立ちますよ!」とお勧めするか、プレゼントしてあげてください。

  • 『お客様が集まる!士業のための文章術』(翔泳社)(http://amzn.to/1gMCQal
  • 『これで怖くない!公務員のクレーム対応術』(学陽書房)(http://amzn.to/LSHVzw
  • 『誰も教えてくれなかった 公務員の文章・メール術』(学陽書房)(http://amzn.to/j5bDZB

常用漢字は政府資料だけ守ればいいと思う。一般人は状況により使うべき。

確かに、状況や目的に合わせて使うべきだと思います。

たとえば「薔薇」と書くのか、「バラ」なのか。「薔薇」が読める人だけをターゲットとして、商品やサービスを売りたいときは、常用外漢字であっても使う必要があるでしょう。逆に、「薔薇」が読めない人にも正確に、効率的に理解してもらいたいときは、「バラ」と書いたほうがよいわけです。

ちなみに、報道機関や出版社などは、各社に独自の表記のルールがありますが、基本的には常用漢字を使うようルール化しています。

ワークの文章で、商品券を終了することに対して、店舗側のお詫びや説明は不要か?
「え? 終わっちゃうの?」といったお客様の心情に配慮が必要では。

鋭いご指摘!
今回のセッションではお話しできませんでしたが、お客様とのコミュニケーションという意味では、ご指摘のような配慮が必要な場面もあります。

もし、急にサービスを終了することになったのであれば、「3月31日(土)です」の後に、「これは、○○のためです」と理由を書きます。さらにおわびの言葉を添えたほうが良いですね。理由やおわびを書くと文章が長くなりますが、不特定多数に向けた文章の場合、やはり1文を短くするよう心がけると伝わりやすくなります。

お知らせというよりおわびをすべきケースは、『その文章、キケンです!』(http://goo.gl/0Vnidj)の第2章「クレーム・不祥事への対応」でご紹介しています。ご興味があればご覧ください。

ちなみに、「詫び」は常用外の漢字です。

「致します」「宜しく」など漢字率が異常に高いメールをもらうことが多く、気になる。
相手にやわらかく伝えるのに、良い方法はあるか。

「相手にやわらかく伝える」というのは、「あなたは漢字を使いすぎですよ、ということを伝える」という理解でよろしいでしょうか。

そうであれば、なかなか難しいですね。相手との関係性次第ですが、たとえば私の話した内容を、以下のような方法で紹介するのはどうでしょうか。

  • 私のセッション動画が一般公開されたら、「このセミナー、役に立ったので、お時間のあるときにご覧ください」とお勧めする
  • 「この本、とても役に立ったので」と、『その文章、キケンです!』(http://goo.gl/0Vnidj)や『言いたいことが確実に伝わる メールの書き方』(http://amzn.to/gktG2C)をプレゼントする

つまり、私のせいにして、私に語らせるという方法です。この手を使っている方は、結構いらっしゃいますよ(笑)

「頂く」を文中に2回以上使うような場合の表現や書き換えを聞きたい

確かに、「いただく」が2回以上続く場合、文章も長くなり、回りくどい印象になりますね。
一番多いのは、次のような「させていただく」ではないでしょうか。

  • お送りいただいた書類を拝見させていただきましたが、
  • お送りいただいた書類を拝見しましたが、
  • ご指摘いただいた部分を修正させていただきました
  • ご指摘の部分を修正いたしました

このように、「させていただく」は、ほとんどの場合、削除してしまって問題ありません。
また、相手の動作が複数回続くときに、それぞれ「いただく」をつけると、次の例のようになりますね。

  • 必要事項をご記入いただき、署名・捺印していただき、ご返送いただけますでしょうか
  • 必要事項を記入して、署名・押印の上、ご返送いただけますでしょうか

このように、「いただく」は最後の動作だけにつけると繰り返さずに済みます。あとは短く書き、「、」や「て、」でつなぐと、すべての動作が「していただく」に係(かか)ることが伝わります。
また、箇条書きにするという方法もあります。

  • 以下のご対応をお願いできますでしょうか。
    • 必要事項の記入
    • 署名
    • 押印
    • 返送

ちなみに、「捺印」の「捺」は常用外漢字なので、「押印」と書き換えました。

以上、少しでもお役に立つことができればうれしく思います。
また、いつかどこかでお会いしましょう!

2019年、CSS Niteでは49回の関連イベントを通して123セッションが行われました。その中からベスト・セッション+αを選びました。

2010年から2019年のベスト・セッション