CSS Nite LP52「ウェブサイト制作、手を動かす前に考えておくこと」フォローアップ(1)権 成俊さん(ゴンウェブコンサルティング)

2017年7月15日(土)ベルサール神田 イベントホールで開催したCSS Nite LP52「ウェブサイト制作、手を動かす前に考えておくこと」のフォローアップとして、権 成俊さん(ゴンウェブコンサルティング)『なぜ、あなたのウェブには戦略がないのか』セッションのスライドなどを公開します。

メッセージ

私がみなさんにお伝えしたかったのは、『戦略から始めよ』です。

ウェブサイト制作をしっかりと事業の文脈でとらえているか。 それが出来ていれば、自然と『誰に』、『何を』が明確になるはず。 そして、その視点は、ウェブ制作会社の経営の視点とも重なります。

アンケートの回答を見ると、『自分のお客さんはそんなレベルではない』『そこまでの予算を出してくれない』こんな意見が見受けられました。 しかし、それはお客様のレベルのせいではなく、自分自身のレベル問題でしょう。 そのクライアントは、あなたにはそのお金を払わないだけで、かならず他の誰かには払っています。 あなたの仕事にはその価値が無いと考えているのです。

本気で戦略が必要だと思っていますか? クライアントが費用を確保してくれたなら、取り組む覚悟がありますか? その覚悟をクライアントにぶつけて、「戦略からやりましょう」と本気で伝えましたか? その弱気を、経営者は敏感に読み取ります。 クライアントも、制作会社も、リスクを負いたくない。 両者の逃げの姿勢が、不健全な関係を生み出しています。

私は、1000万円は『覚悟の予算』と言っています。 覚悟さえすれば、誰でも出せる金額だからです。 個人でも、車を買えば数百万円、子供が生まれれば1000万円、マンション買うなら数千万円、という費用がかかります。 生涯賃金2億円といわれる中で、1000万円はたったの5%です。 個人でも必ずねん出できる費用です。 ただ、それを投資し、かならず収益につなげる、という覚悟がないだけです。

個人でもそうなのですから、1000万円を出せない会社はありません。 従業員の給料をはじめとして、いろいろな費用でそのくらいのお金は使いますし、銀行から借りています。 カウンターだけのラーメン屋を始めるにしても、1000万円はかかります。 しかし、クライアントの経営者は、「あなたが創るウェブサイトには1000万円を払うほどの価値はない」と思っているだけです。

ウェブ制作会社が食べていけなくなる時代はもうそこまで来ています。 そうなる前に、いままで目を背けていたことに目を向けなければなりません。

「私たちはウェブサイトを制作することで、本当に貢献できているのか」

これを真剣に考えてみてください。 ここから出発し、成果、貢献というゴールを見据えない限り、将来はありません。

必ずしも、自社がコンサルティング機能を持つ必要はありませんが、その場合は当社のような会社に支援を頼むとか、 ismに入会してアドバイスを求めるなどの方法を県としてください。

「上司が理解してくれない」 「大企業なので動かない」

そういう場合は会社を辞めましょう。 残念ながら、10年で95%の会社がなくなります。 いまあなたが務めている会社が、その残り5%に当てはまるかどうかを考えてみてください。

これからはウェブサイトの価値を問われる時代が来ます。 そのとき、あなたが戦略から始められる人間なら、どこにいても活躍できるはずです。

クライアントだけではありません。 あなたの会社には戦略があるのか、ということを自ら問うてみてください。

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■質問への回答

Q.お客様を選ぶとき、どう断るか

A.当社は有償ご相談に来ていただいた中で、4社に1社しかお受けしません。

2社は、解決の方向性そのものをもう一度考え直すべき、もしくは単なる金儲けなので応援したくない、という回答です。 1社は、良いことを考えているし、たぶん実現できる。しかし、当社じゃなくても良いので、どこかご紹介します、という回答です。 残った1社は、世の中のために残したい会社で、私たちしかそれを手伝えない。だから手伝います。となります。

つまり、なんでもはっきり言います。 それがお金をもらってご相談に来ていただく方に提供する価値です。

Q.ヒアリングや調査分析で200?300万円は、内部コスト的に見合う金額か?

A.見合うように金額を設定しています。

ご指摘のように、ヒアリングや調査分析は、コストがかかります。 私たちのお客様のほとんどは年商10億円未満の小企業です。 大企業のように、単純にコストをかけて調査会社に依頼する、というようなことはしません。 ネットでの調査や、競合の決算資料を参考に、フェルミ推定などを駆使しながらやっています。 戦略的なシーンでの調査は、事業にGOサインを出せるかどうかの判断の根拠になれば十分です。 そのため、精度よりも、成果の見込みが1億円なのか10億円なのか、という判断が出来る範囲でやっています。 そうやってぎりぎりまで絞って、それにかかる内部コストを見積もっています。

Q.何をもって成果が出た、と判断するか

A.支援から生まれた利益額です。

簡単に言えば、マーケティングレベルなら2年以内で利益回収を目標に、新規事業やイノベーションなら10年くらいでの累計売上規模を基準にコストを考えます。 ECサイトでしたら、ご紹介した事例のように明確に判断できます。 例えば、1000万円の投資によって、年商が1億円くらい伸びれば十分成果はあったと判断します。

新規事業なら、いまの事業に匹敵する売り上げを作るための戦略を立て、そのためにいくらまでかけられるかを考えます。 ニ年で回収する、という見方ではなく、新しい事業によって、たとえば今後10年間でどのくらいの売り上げが見込まれるか、そのための投資額と考えます。

いずれにしても、私たちの費用は成果に対して圧倒的に少ないため、ほとんどのお客様は十分に満足してくださいます。

Q.クライアントが大企業だった時は同じスキームが通用しないのでは?

A.大企業は支援しません。

もともと、経営コンサルティングというのは中小企業向けのサービスです。 大企業には戦略部門があり、外部に戦略支援を求めることは少ないのです。 そのため、大企業向けのコンサルティング会社は、調査分析や、ITコンサルティングなどを中心とするところが多いのです。

しかし、大企業でも戦略策定能力が低い会社はたくさんあります。 組織として機能していません。

そういう会社では、経営者がリーダーシップを発揮できていなかったり、危機感が足りなかったりして、私たちが入っても何も動かせないのです。 なので、私たちのターゲットとするクライアント像は、以下の通りです。

  • 未上場 ・社長にリーダーシップ ・組織規模100名以下、売上50億円未満 ・新規事業やイノベーションを考えており、長期投資のフェーズにある

アンケートから大体のご質問は拾ったつもりですが、抜けがあるかもしれません。 他にもご質問があればFacebookからお問い合わせください。

■ご紹介した企業とサイト

■告知

9月2日 CSS Nite AOMORI

今回とほぼ同内容で、青森編もあります。 ご興味がありそうな方がいれば、ご案内いただけると嬉しいです。

・ism

私とじっくり話したい方がおられましたら、こちらのイベントの懇親会にご参加ください。 今年度だけ無料のism東京支部イベントです。

私が参加するのは懇親会だけです。

もちろん、ismの正会員もどうぞ。 早速ご入会いただいた方もおられました。 ありがとうございました。

・書籍レビューのお願い

たくさんの方に読んでいただくために、みなさんのレビューが参考になります。

・求人 デザイナー、ディレクター、営業、コンサルアシスタント、いずれのポジションでも全体を見ながら学ぶことができます。 ご興味のある方はぜひFacebook等で気軽にご連絡ください。

■まとめ

懇親会も含め、参加者のみなさまの活発なご意見が参考になりました。 また皆様とゆっくりお話しできる日を楽しみにしております。

このセッションは「CSS Niteベストセッション2017」にてベスト・セッション10に選ばれました。

2019年、CSS Niteでは49回の関連イベントを通して123セッションが行われました。その中からベスト・セッション+αを選びました。

2010年から2019年のベスト・セッション