CSS Nite Shift11(5)「マーケティング」益子 貴寛(まぼろし)、安達 里枝(スマイルファーム)

2017年12月16日(土)ベルサール半蔵門 イベントホールで開催したShift11:Webデザイン行く年来る年のフォローアップとして、益子 貴寛さん(まぼろし)、安達 里枝さん(スマイルファーム)の『マーケティングの矛盾:事例で振り返る2017年のウェブマーケティング』セッションのスライドなどを公開します。

フォローアップメッセージは、イベント開催直後(2017年12月)の時点のものです。

フォローアップメッセージ(補足など)

益子さんから

マーケティングセッションを担当した益子です。

今年は、前半でさまざまな事例を取り上げる一方で、後半では本質的な話にフォーカスしました。クライアントワークや社内でアイデアが求められたときに、「こういう事例がありますよ」というネタとしてお使いください。マーケティングのひとつの大きな目的は「態度を変えてもらうこと」であり、「恋愛」になぞらえて考えるとわかりやすいという点も、周りへの説明の切り口として使えます。ぜひ、お役立てください。

デザインやテクノロジーとマーケティングとの距離は、年々近づいてきています。来年はAI(人工知能)やBI(ビジネスインテリジェンス)がもっと身近なものになり、プロジェクトとしてチャレンジする機会が増えてくるでしょう。「モノづくりから、コト(しくみや体験)づくりへ」という流れに乗っていけるかどうかが、ますます大切。最後のセッションで中川さんがおっしゃった「コンテンツ・イズ・キングから、ブランド・イズ・キングへ」という言葉と、相通じると考えます。

アンケートへの回答

オリンピック関連で変化したことはありますか?

ウェブに限らないのですが、デザイン面で五輪や五色を模したような表現や、スポーティなビジュアル(肉体やスピード感をあらわしたもの)が増えている印象があります。また、ウェブサイトの多言語対応(特に英語と中国語)に取り組むところも、ますます増えるでしょう。

デザインセッションで、原さんから「(ロシアのウェブサイトでも)ウェブフォントなので自動翻訳できる」という言葉がありました。リッチな表現が必要なテキストであっても、なるべく画像化せずにそのままテキストとして入れ込み、ウェブフォントやCSSでデザイン性を高めることが大切といえそうです。

態度変容を、どのように評価するのですか?

最終的にはコンバージョン(ウェブ上のコンバージョン数だけではなく、実申し込み数など)で評価します。KPIとしては、ソーシャルであればエンゲージメントなど、施策に応じてさまざまなものが立てられます。大企業は消費者と企画側の距離が遠いので、エンゲージメントは「数」が第一で評価される傾向がありますが、それほど大きくない会社では、コメントひとつひとつの中身などの「質」が、業務改善や運用のモチベーションを支えるために大切だったりします。

安達さんの事例「つばめ中央自動車学校」のように、掘り起こしや機会損失を防ぐアプローチで消費者とのコミュニケーションを改善する方法であっても、結果的に実申し込みという数字にあらわれます。私が解析を担当している大手企業のプロモーションサイトでも、コンテンツやUI改善の効果をクリックイベントやスクロール量をKPIとして測定していますが、最終的にはコンバージョン数や実申し込み数が評価の対象となります。

広告のように決まった期間に決まった額を投下する取り組みではないので、短期的な効果検証ではわかりやすい数字が出ないケースもありますが、ある程度の期間がたてば、必ず数字としてあらわれます。運用する中でKPIを追加したり見直していく、といった柔軟さも必要ですね。

マーケティング初心者ですが、おすすめの入門書はありますか?

もっとも権威のある古典は、フィリップ・コトラーの本です。中でも『コトラーの戦略的マーケティング』が読みやすいと思います。ウェブマーケティングであれば、権成俊さんの『なぜ、あなたのウェブには戦略がないのか?』がよいですね。

安達さんから

マーケティングセッションを担当した安達です。

今年のセッションは、Shift参加者のペルソナを考え、分析手法・ツールの話題をそぎ落とし、「30分のセッション時間の中で、普段マーケティングに関わりのない職域の方にもマーケティングを自分事にしてもらうための態度変容を起こしてもらえるか」を目標として、構成しました。

事例を通じて、クライアント案件にも活用できそう!とか、時間と気分を味方につけるにはどんなクリエイティブが良いだろうか?と、自分事に置き換えて考えるきっかけとしていただけたら幸いです。

「マーケティングは恋愛」という表現はありきたりと感じるかもしれません。しかし、恋愛に例えると年齢や立場が変わっても、リテラシーが異なっても、それぞれ腑に落ちるところがあるようです。自社都合のマーケティングを要望するクライアントさんに、ぜひ伝えてみてください。

AIスピーカーの波が到来し、音声検索が中心となるであろうこれからの時代。ユーザーが求める文脈とコンテンツとの良き出会いの場を作り、態度変容につなげていくためにも、セッションでお伝えした6つのポイントは、テクノロジーの変化に流されず、活かすことができる本質的な部分だと考えています。

マーケティングオートメーションやWeb接客ツール、AIチャットボットなど、さまざまなテクノロジーの進化がありますが、結局のところ「どう活用するのか」「どう接客するのか」を選び、設計するのは人です。使うのも人です。ペルソナの心理から目を背けることはできません。マーケティング視点でデザイン・UIを考えることで、よりユーザーの心に寄り添った顧客体験を実現できるものと考えています。

これからの10年、私たちを取り巻く環境は、また大きな変化が訪れるでしょう。どんな変化が訪れても、本質的に物事をとらえる目は失わないようにしたいな...と、いつもいつも、自分自身に言い聞かせています。

これからも、「好きなあの人を喜ばせる」したたかなマーケティングを展開していきましょう。ありがとうございました。

アンケートへの回答

オリンピック関連で変化したことはありますか?

自治体の観光系サイトの解析やソーシャルメディア運用、民間企業の越境ECや多言語化に携わっていますが、オリンピックに向けて多言語展開への予算が多く割かれるようになってきたと実感しています。多言語展開での重要なポイントとしては、「翻訳の質・写真や動画のSNS映え・臨場感」です。今まではGoogle翻訳で済ませていた自治体や企業も、検索流入を考慮して各言語ごとのページを、質の高い翻訳者を導入して制作したり、日本語の文章を翻訳するのではなく、初めからネイティブのライターに英語でライティングをすることを望むところも増えてきています。

また、訪日客の増加に伴い、訪日をきっかけに商品を購入した人へ向けた越境ECの制作依頼も増えてきたという実感があります。オリンピックに向け、「ビジネスチャンスを逃さないぞ!」という企業が増えていますので、マーケティングも、ターゲット国にローカライズした施策を考える機会が増えてきました。

態度変容を、どのように評価するのですか?

企業が求めているのは、やはり事業成果につながるかどうかなので、態度変容の評価は、最終的にはコンバージョン数(KGI)で評価します。ただし、事例でも紹介したような、少し遠回りなマーケティング施策を実施する場合は、コンバージョンの数値に変化が現れるまでには時間がかかる場合もありますので、ソーシャルメディアであればエンゲージメントをKPIとして評価する場合が多いです。

エンゲージメントの評価はなかなか難しいところではあるのですが、特にソーシャルメディアの施策を実施していると、その商品やサービス名での言及数が増えたり、指名検索流入が増えてきます。このように言及数(ポジティブ・ネガティブ両方)をツールを使用して調査しながら、指標のひとつとして評価していく場合もあります。

遠回りマーケティングになって、効果の測定が難しくなっているのではないか?と感じるが、そこはどうしているのでしょう?

こちらも前項目の回答と同様です。

マーケティング初心者ですが、おすすめの入門書はありますか?

書籍を読むことももちろん勉強になるのですが、私が初心者の方におすすめしているのは、ご自身が買い物をする時に、「このお店やブランドは、どんなマーケティングを展開しているのか?」を考えながら利用することです。

そこにいるお客さん達は、お店の施策に喜んで乗っかっているのか。ゴリ押し感が強くて引いてしまっているのか。自分がされてどう感じたか。ほんの少しの気付きでも良いので、メモしたり、良いなと思ったモノ?コトは、スマホで撮影して残しておきます。

例えば、私はプロ野球観戦に行くと必ずチェックするポイントがあります。それは、応援グッズや試合の盛り上げ方、来場しているお客さんの行動です。グッズが欲しくなる仕掛けや、最近ではソーシャルメディアのハッシュタグを使った施策など、さまざまなところマーケティングが散りばめられています。

マーケティングは日常に溢れていますので、ちょっと物事の見方を変えるだけで、沢山の参考例に気が付くと思います。色んな角度から気付きが得られることが、マーケティングを学び、理解するためにとても役立ちます。

書籍については、益子さんもピックアップしていた、フィリップ・コトラーや権成俊さんの著書は大変おすすめです。ぜひ一度読んでみてください。

ユーザー心理を分析する手法やそれをアウトプットにつなげる方法を知りたい

業界的には、データありきで分析する方が多いのですが、“データは嘘をつく”ので、データだけではなく、ユーザーインタビューや、ユーザーテストなどの人のリアルな声も大事にしたいと感じています。マーケティング施策やカスタマージャニーを評価するのであれば、絵に描いた餅にならないよう、ぜひユーザーインタビューを実施してみてください。データ分析だけでは気がつかなかった意外な発見があるはずです。

数値(データ)は分析者の判断次第で良く評価される場合も悪く評価される場合もあります。分析者の判断次第でどうにでも評価ができるわけです。つまり、「データは嘘をつく」ということです。私はウェブ解析士として解析案件に多数携わっていますが、実は数値だけで判断するのはとても怖いことだと感じています。

毎年年末に開催している「Shift」シリーズの第12弾として、2018年のWeb制作シーンを振り返ります。